読書の秋、花や植物の読み物はいかが?
こんにちは、ハウス工藤園芸スタッフ、須藤明美です。庭の片付けをして、これから訪れる冬に向かって、静かな時間をどうやって過ごしたいかといえば、私の場合読書です。忙しくも楽しかったガーデニングの時間が落ち着き、その分の時間を読書に費やすのは至福の時です。今回はガーデニングや、植物にテーマを絞って、小説やエッセイを選んでみました。植物好きの同じ趣味を持つ仲間が本の中にも登場していて、「わかるわかる!」なんて自分のことのように感じたり、熱い登場人物に感心したり、とっても身近に感じました。6作を紹介します。

「愛なき世界」三浦しをん
大学での植物の研究をしている研究室が舞台で、ほろ苦い恋心も味わえる小説です。植物を愛してやまない個性的な登場人物の面々を、読みながら想像して、いつしか応援している自分に気が付きます。地道な研究は、たくさんの積み重ねがあってこそ。研究者の苦労を初めて垣間見ました。夢中になれる「愛」を感じ、だからこそなせる業なのかと、タイトルとの共鳴が世界観をグッと広げてくれているようでした。まっすぐに進める道があるって素晴らしい。追求するからこその挫折と、喜び、発想の転換など、生き方としてもとても輝いて見えました。心地よい読後感が幸せな気持ちにさせてくれました。

「ボタニカルライフ 植物生活」いとうせいこう作
テレビドラマ「植物男子ベランダー」の原作本です。植物愛にあふれていて、たまらないお話が満載です。やりがちな失敗談や、うまくいったときの喜びに、わかる!わかる!とうなずいたり、思わず声を出して笑ったりしてしまいました。植物に、まるで人みたいに名前を付けたり、ある時は女優のように扱ったり、狭いベランダで置く位置を野球監督のように植物を選手として采配したり、狭い領土の中での権力争いのようだったり、「たとえ」が最高に楽しい。ガーデナーとは違う「ベランダー」ならではの知恵と工夫で、こんなにも植物と楽しい生活ができるなんて。喜びに満ちた生活が愛おしいです。

「西の魔女が死んだ」梨木果歩作
映画にもなった小説で、ハーブがよく登場して生活にいかしているところに、あこがれるような思いで読みました。学校に行けなくなった中学生の少女と、自然がいっぱいの中で暮らす外国人のおばあさんと二人で暮らし、魔女の教えを学ぶうちに、少しづつ成長していく姿が描かれています。自然に囲まれた生活で、丁寧に暮らす知恵もたくさんあり、おばあさんが伝える言葉に静かな感動を覚えます。ワイルドストロベリーが一面に実っている様子や、眠れないときにハーブティーを飲むところ、洗濯物のシーツをラベンダーの上で干すところが印象的で、思わず私も洗濯物干し場の下にラベンダーを植えたのでした。

「そらみみ植物園」「はつみみ植物園」西畠清順作
プラントハンターの作者さんの、たくさんの植物についてのエピソードがとっても楽しく、目からうろこのようなお話や、心に響くお話までとっても楽しめます。「長い人生の中で、植物にモノゴコロつくとき、本当の意味で植物への愛が芽生える」の言葉に心が動きました。清順さんは150年も続く植物を生業(なりわい)とした家に育ったけれど、18歳まで植物に興味がなかったんだそう。ある時ある植物がきっかけで180度世界観が変わったと。私たちの暮らしは、見渡してみると実は植物でいっぱいです。植物たちはモノゴコロつく瞬間をいつでも待っていてくれています。清順さんならではの植物をテーマにした多岐にわたる活動も素晴らしいです。絵本のようなイラストがいっぱいで、気軽に読めます。

「園芸家12カ月」カレルチャペック作 小松太郎訳
「ウイットに富んだ」というのはこんな表現なんだ。と、思わせてくれるユーモアたっぷりの語り口がとっても粋で、思わず顔がほころんでしまいます。はじめ、園芸の作業などを月ごとにまとめたテクニックやポイントなどの内容かと思ってこの本を手に取った私は、読んでみてびっくり!チェコの著名な文学者さんがここまで夢中になって園芸をいつくしんでいるとは!彼の暮らしがとっても身近に感じて、植物好きとしては、尊敬に値するほどです。そこまで?というほどの植物愛を一緒に楽しめました。初版の44年前でも、今も変わらない土や植物とのつきあい方にうれしくなりました。

「読書の秋、花や植物の読み物」はいかがでしたか?今回改めて読み返してみたり、新しく読んでみた本がいくつもあり、どれも魅力あふれる本ばかりでした。私が植物にモノゴコロがついた瞬間は、結婚して自宅の庭作りを始めた時に、一年草の種をまいてみたのがきっかけでした。母がいとうせいこうさん並みにめちゃめちゃ花好きで、家の中は鉢植えであふれかえっていた環境だったにもかかわらず、実は私はそれまで植物には全く興味がなかったのです。庭に、自分で育てたたくさんの花が咲いた時から、私の花のワクワク人生がスタートしました。